「日本人を募集しても、来ん。だから外国人を採るしかないやろ」。周南の社長さんに、何度も言われた言葉です。気持ちは、痛いほど分かります。でも、その「消去法」で決めると、たいてい後でつまずきます。この記事では、日本人採用と外国人採用を表で並べ、特定技能の基礎、採るまでの流れ、後悔しない5つの見きわめまで、順番に置いていきます。
01日本人採用と外国人採用を、表で並べる
先に言わせてください。日本人雇用も、外国人雇用も、どっちも正解です。ダメなのは「来ないから、こっち」で決めること。まずは2つを、同じ物差しで並べて見ます。
| 見る点 | 日本人採用 | 外国人採用(特定技能など) |
|---|---|---|
| 採りやすさ | 求人広告に月10万円かけても、応募ゼロが続くことも | 母集団を広げられる。人は見つけやすい場面が多い |
| 日本語 | 高い。細かいニュアンスまで通じる | 特定技能でN4レベル。現場ではN3くらい欲しいのが本音 |
| 教育・サポート費 | 基本いらない | 生活支援など。外注なら登録支援機関に月3〜5万円/人 |
| 定着の前提 | 本人次第。長く働ける | 特定技能1号は原則3〜5年で帰国 |
| 向く仕事 | 言葉の機微が要る仕事 | 手順とリズムで回る仕事 |
| 見えにくいコスト | 「そもそも来ない」という採用コスト | 教育・生活・支援の手間 |
▷ 注意:「外国人は安い」で計算すると、まず外れます。教育・生活・支援を足すと、手取りの差は思ったより縮みます。給料の額面だけで比べないでください。
ざっくりの見当は、この分岐で付きます。
仕事の質を決める
向きやすい
回る作業が中心
フィットしやすい
働いてほしい
高度人材を軸に
02見きわめ① 日本語の機微が、どれだけ要る仕事か
いちばん大事な軸です。うちの仕事は、言葉の細かいニュアンスが要るのか。そこから見ます。
介護の現場なら、お年寄りの体調の変化を、会話の端から察する。建設なら、親方の「あれ持ってこい」の"あれ"を読む。こういう仕事は、外国人にとってハードルが高い場面が多い。逆に、言葉より手順とリズムが効く仕事は、フィットしやすいです。製造ラインの組立、清掃、農業の収穫。手が覚える仕事です。
ざっくり、こんな見取り図で考えてみてください。
- 接客(高単価帯):日本語の重要度は高い。外国人とのフィット度は低め
- 製造ライン:日本語は中くらい。フィット度は高い
- 建設・現場:日本語は中〜高。フィット度は中くらい
- 農業・清掃:日本語の重要度は低い。フィット度は高い
- 介護:日本語の重要度は高い。フィット度は中くらい
▷ ここがコツ:「うちの仕事」とひとくくりにせず、作業を工程で分けて見る。同じ会社でも、ラインは外国人が強くて、電話応対は日本人向き。そんな風に、工程ごとに割り振れます。
03見きわめ② 教育とサポートのお金、うちで払えるか
外国人雇用には、求人票に出てこない、見えにくいお金がかかります。ここを甘く見ると、あとで効いてきます。
- 日本語教育:特定技能なら日本語はN4レベル。でも現場では、N3くらい欲しいのが本音
- 生活のサポート:住むところ、銀行口座、役所の手続き。ここも会社が絡みます
- 文化の研修:宗教、食べ物、働くことへの考え方。国が違えば、前提が違う
- 定着のサポート:ひとりで心細くなる。母国の家族との連絡。ここも見てあげる
これを社内で吸収できる体制があるか。なければ、登録支援機関への外注になります。目安で月額3〜5万円/人。人数が増えれば、この分もかさみます。求人票に出てこない費用を、表にまとめておきます。
| 見えにくい費用 | 中身 | 目安 |
|---|---|---|
| 支援の外注 | 登録支援機関に生活支援などを任せる | 月3〜5万円/人 |
| 日本語教育 | N4からN3へ。現場で通じる力まで | 教材・講座で変動 |
| 生活の立ち上げ | 住まい・銀行口座・役所の手続き | 入り口でまとまる |
| 文化・定着 | 研修、面談、母国の家族との連絡 | 手間として効く |
日本人雇用なら、こういうサポートは基本いりません。ただし、日本人には「そもそも来ない」という別のお金がかかる。求人広告に毎月10万円かけて、応募ゼロが続く。あの現実です。どっちにも、コストはあります。
▷ 注意:「外国人は安い」で始めた社長ほど、あとで「思ったより手がかかった」と言います。額面の給料だけで、決めないでください。
04見きわめ③ 何年、居てほしいのか
ここは、意外と見落とされます。同じ「外国人」でも、制度で先が全然ちがいます。
技能実習や特定技能1号は、原則3〜5年で帰国します。これは「人を採る」というより、「期間限定の戦力」を確保する話。3年かけて覚えてもらった技能が、また消える。それを受け入れられるか、です。
もうひとつが、特定技能2号や高度人材。こちらは永住も前提にできます。社内の文化にもなじむし、仕事の引き継ぎもずっとスムーズ。ただし、永住前提の人は給与水準が日本人と同等以上になります。「外国人だから安く」は、もう通用しません。
▷ ここがコツ:先に「うちは何年、居てほしいのか」を決める。3年でいいのか、10年一緒に働きたいのか。そこが決まると、選ぶ制度は自然としぼれます。
05特定技能って、そもそも何?(基礎)
「外国人採用=特定技能」と思われがちですが、特定技能は制度の名前です。ざっくり押さえると、こうです。
- 人手不足の分野で働ける在留資格。介護・建設・製造・外食・農業など、対象の分野が決まっています
- 1号と2号がある。1号は原則3〜5年で帰国、家族の帯同は基本なし。2号は更新でき、永住も見えてくる
- 試験がある。日本語(N4が目安)と、分野ごとの技能の試験を通ること
この1号と2号は、先の見え方がまるで違います。並べて見ます。
| 見る点 | 特定技能1号 | 特定技能2号 |
|---|---|---|
| 在留の期間 | 原則3〜5年で帰国 | 更新でき、永住も見えてくる |
| 家族の帯同 | 基本なし | 条件を満たせば可 |
| 給与の水準 | 日本人と同等 | 日本人と同等以上 |
| 向く狙い | 期間限定の戦力 | 長く働く柱 |
技能実習との違いも、よく聞かれます。技能実習は「学んで母国に持ち帰る」のが建前。特定技能は「即戦力として働いてもらう」のが建前です。目的が、そもそも違います。
▷ 注意:在留資格の要件(対象の分野・試験・在留の期間・家族帯同の可否)は、制度改正で変わります。採る前に、必ず出入国在留管理庁など公式の最新情報で確認してください。
06特定技能で採るまでの流れ(図解)
はじめての人がつまずくのが、この流れ。全体を先に見ておくと、段取りが組めます。
▷ 注意:体制を作らずに「安く人手が増える」で始めると、まずつまずきます。支援の手間まで見て、順番を間違えないでください。
07見きわめ④⑤ 社内の反応と、5年後の会社像
見きわめ④ 日本人の社員が、どう反応するか
これ、忘れがちですが、めちゃくちゃ大事です。外国人を入れると、必ず日本人の社員から反応が出ます。だいたい3つに分かれます。
- 歓迎派:「人が増えて助かる」。素直にありがたい派
- 不安派:「話、通じるんかな」。悪気はないけど、身構える派
- 抵抗派:「うちは日本の会社やろ」。正面から嫌がる派
この抵抗派が3割を超えると、職場が割れます。せっかく採っても、現場がギスギスして続かない。だから採る前に、社長が全員に「なぜ外国人を採るのか」を、自分の口で説明する。ここを飛ばすと、あとで倍もめます。
▷ 注意:「入れてから、おいおい説明」は事故のもと。決めた理由を、先に、全員に。順番を逆にしないでください。
見きわめ⑤ 5年後、どんな会社にしたいか
最後は、いちばん引いた目線です。そもそも、5年後どんな会社にしたいのか。そこから逆算すると、答えが変わります。
- 規模を3倍にしたい:外国人+日本人のハイブリッドが現実的
- 少数精鋭で、利益率を上げたい:日本人の正社員+AIで省力化
- 事業承継して、そろそろ引退したい:無理に採らず、規模を絞る
- 多店舗で広げたい:外国人雇用が現実的な選択肢に
「人手が足りないから採る」ではなく、「5年後こうしたいから、採る」。この順番で考えると、選択肢は勝手にしぼれていきます。日本人でも、外国人でも、選び方を間違えなければ、会社は続きます。地元の若い子が「ここで働いてもええかな」と思える理由にもなります。
08もう一歩くわしく:用語・つまずき・ケース
用語を、かみ砕く
| 用語 | この記事での意味 |
|---|---|
| 特定技能 | 人手不足の分野で働ける在留資格。1号は原則3〜5年、2号は更新できる |
| 技能実習 | 「学んで母国に持ち帰る」建前の制度。採用として考えるなら特定技能が中心 |
| 登録支援機関 | 生活や手続きの支援を外注する先。目安で月3〜5万円/人 |
| N4/N3 | 日本語能力の目安。特定技能はN4。現場ではN3くらい欲しいのが本音 |
よくあるつまずきと、直し方
| つまずき | 直し方 |
|---|---|
| 「来ないから外国人」の消去法で決める | どっちも正解。ダメなのは決め方。5つの見きわめで |
| 額面の給料だけで「安い」と計算する | 教育・生活・支援を足すと差は縮む |
| 社員に説明せずに受け入れる | 抵抗派が3割を超えると職場が割れる。社長の口で「なぜ」を |
| 5年後を考えずに1号で揃える | 何年居てほしいかを先に決める |
ケースで見る(仮の例)
周南の製造業(社員30名・仮の例)。「日本人が来ないから」で特定技能2名を受け入れ。受け入れ前に社長が全員の前で話したのは一度だけ。3か月後、現場から「指示が通じない」「なぜうちが」という声。
やり直したのは、社内の側でした。工程を分け、言葉があまり要らない作業から任せる。日本人社員には「なぜ外国人を採るのか」を、社長が自分の言葉でもう一度。支援は登録支援機関に頼みつつ、月1回は社長が本人と話す時間を作った。
半年後、現場は落ち着き、2名は戦力になりました。決め方を間違えていたのではなく、受け入れ側の準備を飛ばしていた。外国人雇用は、採る前の社内の準備が9割です。
- 消去法で決めない。5つの見きわめで
- 額面ではなく、教育・生活・支援を足した費用で
- 社員への説明と、工程の分け方。受け入れ側の準備が9割