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「クラウド会計にすれば楽になる」。その前に、知っておく3つのこと

松添 栞士郎 🗓 2026.08.07 ⏱ 約9分
会計 「楽になる」の前に、
知っておく3つのこと。
目次
  1. 「いつかは」と思って、何年経ちましたか
  2. 誤解①「データ移行が大変そう」
  3. 誤解②「経理担当が反対するから無理」
  4. 誤解③「税理士が変えなくていいと言う」
  5. 「楽になる」の前に:メリットと注意点
  6. 本当の「自走化」=3つの段階
  7. 向いている会社・今すぐでなくてもいい会社
  8. もう一歩くわしく:用語・つまずき・ケース
  9. よくある質問

「freee? マネーフォワード? 聞いたことはあるけど、うちにはまだ早い」。周南の社長さんに、よく言われます。でも、止まっている理由は、たいてい"見せかけの壁"です。この記事では、移行をためらう3つの誤解・「楽になる」の前に知る注意点・導入後の自走化3段階・向いている会社の見分け方まで、順番にまとめます。

01「いつかは」と思って、何年経ちましたか

クラウド会計 未導入中小企業の約58%「いつかは変えたい」未導入の85%今期中に変える予定12%だけ
図:「いつかは」のまま、何年も経つ

数字を、ひとつだけ。国内の中小企業で、クラウド会計を入れている会社は約42%(2024年・freee+マネーフォワード合算の推計)。まだ半分以上が、未導入です。

そして、未導入の経営者の85%が「いつかは変えたい」と答えています(freee 中小企業意識調査 2024)。でも、今期中に変える予定がある会社は、12%だけ。「いつかは」と思ったまま、何年も経つ。これが、いちばん多いパターンです。

止まる理由は、だいたい3つ。「データ移行が大変」「経理担当が反対」「税理士が変えなくていいと言う」。順に、ほどいていきます。

02誤解①「データ移行が大変そう」

山口の卸売業A社(仮想・従業員18名)の話です。社長は10年使った古い会計ソフトから、freeeへの乗り換えを検討していました。でも、こう思い込んでいた。「10年分のデータを全部移さんといけん」「過去の取引先も科目も、全部引き継ぐんやろ」「半年がかりの大仕事や」。それで、3年先送りにしました。

実際に専門家に相談したら、こうでした。

社長のひとこと。「3年前に動いていれば、3年分ラクできていた」。実際に必要な移行作業は、これくらいです。

移行するもの必要性手間
開始時点の
貸借対照表の残高
必須1〜2日
取引先マスタあった方が便利1日
勘定科目の体系推奨半日
過去の仕訳データ不要(旧ソフトで見られる)0日
過去の請求書PDF不要(旧ソフトで見られる)0日

▷ ここがコツ:「全部移す」と考えるから、大仕事に見えます。「今の残高だけ、期首に合わせて」。この2つを守るだけで、3〜5日で終わります。

実際の移行は、この順で進みます。全体を先に見ておくと、身構えなくて済みます。

STEP 1
旧ソフトは残す
過去データは消さない。あとで見たくなったら、そこで見られる。
STEP 2
期首に合わせる
開始日を期首(多くは4月1日)に。ここが移行を軽くするコツ。
STEP 3
開始残高を入れる
要るのは「今の残高」だけ。貸借対照表の残高を入力する。
STEP 4
明細を連携する
銀行・カードをつなぐ。ここから、手入力が減っていく。
STEP 5
運用スタート
日々の取引を回し始める。ここまでで3〜5営業日。

03誤解②「経理担当が反対するから無理」

山口の製造業B社(仮想・従業員25名)。社長がクラウド会計の話を出すと、経理の田中さん(55歳・勤続20年)が、顔を曇らせます。「私、パソコン苦手で」「今のソフトに慣れてるので」「新しいのは若い人がやればいい」。社長は「無理強いはできん」と、3年先送りにしました。

でも、その田中さんが体調を崩して、1ヶ月の長期休暇。その間、誰も経理を回せず、大混乱になりました。

社長のひとこと。「田中さんに頼り切っていた。属人化のリスクに気づくのが遅かった」。ここで大事なのは、「パソコン苦手」は表面の理由だ、ということ。本当の心配は、たいてい別にあります。

口に出る理由本当の心配
「パソコンが苦手」自分の存在価値が、変わってしまうのでは
「今のままで十分」新しいことを覚える時間と、気力がない
「ミスが怖い」失敗したら、責任を問われる
「若い人にやらせれば」自分の役割が、小さくなる不安

だから、処方箋はこうです。

▷ 注意:反対する人を、置いていかないでください。「あなたを外すためではなく、あなたをラクにするため」。ここを最初に、ちゃんと言葉で伝えます。順番を間違えると、一生反対されます。

「うちの経理、何から手をつければ?」
今の状態を見て、順番から整理します。

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04誤解③「税理士が変えなくていいと言う」

山口のサービス業C社(仮想・従業員12名)。社長が顧問税理士にクラウド会計の話をすると、こう返ってきました。「今のままで問題ありませんよ」「クラウドはセキュリティが心配です」「使い慣れたソフトの方が確実です」。社長は「専門家がそう言うなら」と、5年据え置きにしました。

でも、別の経営者の集まりで、気づきます。

社長のひとこと。「先生の都合だったのかも、と気づいたのは、変えた後でした」。税理士の反対には、3つのパターンがあります。

パターン中身対処
A. 事務所が
クラウド未対応
税理士側のノウハウ不足クラウド対応の税理士への変更を検討
B. データ取得が
手間
旧ソフトの方が税理士側は楽顧問料の見直し・作業の再配分
C. 正当な理由セキュリティなど、本質的な論点詳しく聞いて、いっしょに検討

今、税理士事務所の世代交代が起きています。60代以上の事務所のクラウド対応率は約30%、40代以下は約85%(傾向の目安)。「変えなくていい」の理由が、じつは事務所の都合ということも、少なくありません。

▷ 注意:「セキュリティが心配」と言われたら、そこで止めず「具体的に、何が心配ですか」と聞いてください。正当な理由なら一緒に対策する。ふわっとした理由なら、都合の可能性があります。

05「楽になる」の前に:メリットと注意点

3つの誤解を越えたら、次は現実的な話。クラウド会計に変えると、何が良くて、何に気をつけるか。両方を、並べて見ておきます。

変えて良くなること気をつけること
銀行・カード明細が自動で取り込まれ、手入力が減るネット環境と、月額の利用料がずっとかかる
月次決算が早く出て、数字を見て動ける入れただけでは楽にならない。運用の設計が要る
数字を複数人で見られ、属人化がほどける経理担当の役割を、作り直す手間がかかる
税理士とデータを共有しやすい今の税理士が未対応だと、うまく回らない場合がある

▷ ここがコツ:「入れれば楽」ではありません。楽になるのは、運用の設計と、担当の役割づくりまでやってから。ソフトは道具、活かすのは仕組みです。

いちばん変わるのは、明細の入力です。手打ちが、連携に変わります。

導入前の経理
手入力が中心
明細の自動取込で
手間 約50%減

▷ 注意:「約50%減」は、明細の自動取込が回り始めた後の目安です。会社の取引の中身で、効き方は変わります。

06本当の「自走化」=3つの段階

1入力の自動化(1〜3か月目)明細の自動取込で、経理の手間 約50%減2経営判断が速くなる(4〜6か月目)月次決算が翌月20日 → 5日に3社長の頭が変わる(7か月目〜)勘ではなく数字で決める、が習慣になる
図:多くの会社はStage1で止まる。効果はStage2から

クラウド会計の本当の値打ちは、入れた後の「自走化」にあります。3つの段階を、順に上っていきます。

STAGE 1
入力の自動化
1〜3ヶ月目。明細の自動取込で、経理の手間が約50%減る。
STAGE 2
経営判断が速くなる
4〜6ヶ月目。月次決算が翌月20日→5日に。数字を見て動ける。
STAGE 3
社長の頭が変わる
7ヶ月目以降。勘ではなく数字で決める、が習慣になる。
導入前の月次決算
翌月20日
Stage 2 まで進むと
翌月5日

多くの会社は、Stage 1で止まります。本当の効果は、Stage 2から先にあるのに、そこまで伴走してくれる相手がいない。これが、いまの現実です。

▷ ここがコツ:「入力が楽になった」で満足しないでください。ゴールは、月次決算が翌月5日に出て、その数字を見て社長が動けること。そこまで行って、初めて元が取れます。

07向いている会社・今すぐでなくてもいい会社

全部の会社に、今すぐ必要なわけではありません。今の状態で、動く時期が変わります。

「うちは、今すぐ?それとも待つ?」
経理が属人化。
1人に頼り切り
今すぐ、
会計DX
明細を手入力。
月次が翌月15日より遅い
早めに
検討したい
分業できている。
すでに翌月5日
今は
急がなくてOK

もう少し細かく見ると、こういう分かれ方をします。

向いている会社今すぐでなくてもいい会社
経理が属人化していて、怖い経理が複数人いて、分業できている
月次決算が翌月15日より遅いすでに翌月5日以内に出ている
銀行・カード明細を手入力している自動取込ができている
判断のための数字が、見えていない経営ダッシュボードが動いている
顧問税理士がクラウド対応している旧来の税理士に強く依存している

30秒セルフチェック

次のうち4つ以上あてはまれば、会計DXのタイミングです。

会計DXは、「導入」ではなく「自走化」までがゴールです。今日からの一歩は、これだけ。まず、月次決算が「翌月何日」に出ているか数えてみる。上のセルフチェックを3分でやってみる。4つ以上なら、今の税理士さんに「クラウド対応していますか」と聞いてみる。

小さい会社の数字が、翌月5日に見えるようになる。それは、社長が勘ではなく数字で動けるということ。地元の会社が強くなれば、若い子が「ここで働きたい」と思える場所が増えます。会計を整えることは、その土台づくりです。

08もう一歩くわしく:用語・つまずき・ケース

用語を、かみ砕く

用語この記事での意味
クラウド会計インターネット上で使う会計ソフト。銀行明細や請求書を自動で取り込める
期首に合わせる年度の始まりで切り替えること。要るのは「今の残高」だけ。過去データは全部移さなくていい
属人化経理が1人に頼り切りの状態。その人が休むと止まる
自走化入力の自動化→経営判断が速くなる→社長の頭が変わる、の3段階

よくあるつまずきと、直し方

つまずき直し方
10年分のデータを全部移そうとする今の残高だけ、期首に合わせて。3〜5営業日
経理担当の反対で止める「あなたを外す」ではなく「あなたが休んでも回る形に」と伝える
税理士の「変えなくていい」を鵜呑みにする事務所の都合か、正当な論点か。具体的に聞き分ける
Stage 1で満足する本当の効果はStage 2(月次が翌月5日)から
1入力の自動化(1〜3か月)明細の自動取込で手入力が約50%減2経営判断が速くなる(4〜6か月)月次決算が翌月20日 → 5日3社長の頭が変わる(7か月〜)勘ではなく数字で決める、が習慣に
図:自走化の3段階。多くはStage 1で止まる

ケースで見る(仮の例)

周南の建材卸(社員15名・仮の例)。経理は60代の担当者1人。社長は「その人が辞めたら終わる」と分かっていて、3年動けなかった。きっかけは、担当者の入院。1か月、誰も経理を回せなかった。

復帰後、担当者と一緒に切り替えを決めた。期首に合わせ、今の残高だけで開始。明細の自動取込が回り始めると、担当者の手入力が半分に。「楽になった。もっと早くやればよかった」は、反対していた本人の言葉。

半年後、月次決算が翌月20日から5日に。社長は数字を見て決めるようになった。入れたのはソフト。変わったのは、会社の決め方です。

▷ ここだけは
  • 移すのは今の残高だけ。期首に合わせる
  • 反対する担当者を外すのではなく、休んでも回る形に
  • Stage 2(月次が翌月5日)まで行って、初めて効く

09よくある質問

データ移行は、本当に大変じゃないの?
「今の残高だけ、期首に合わせて」始めれば、移行作業は3〜5営業日で終わります。過去10年分の仕訳を全部移す必要はありません。旧ソフトを残しておけば、過去データはそこで見られます。
今の税理士のままでも、変えられる?
事務所がクラウド対応していれば、そのまま変えられます。未対応の場合は、うまく回らないことがあるので、対応状況を先に確認してください。反対の理由が「事務所の都合」なのか「正当な論点」なのかを、具体的に聞き分けるのがコツです。
経理担当が高齢で反対。どうすれば?
「あなたを外すためではなく、あなたをラクにするため」と、最初に言葉で伝えてください。覚える費用は会社が持ち、移行後は入力作業から分析・改善の担当へ。役割を作り直すのがポイントです。
入れれば、それで楽になる?
入れただけでは楽になりません。楽になるのは、運用の設計と担当の役割づくりまでやってから。ゴールは月次決算が翌月5日に出て、その数字で社長が動けることです。
いつ始めるのがいい?
期首(多くは4月1日)に合わせるのが、いちばん移行が楽です。「いつかは」と思ったまま何年も経つより、次の期首を一つの区切りにして動くのがおすすめです。

▷ 数字について:本文の割合(導入率 約42%、いつかは変えたい 85%、今期予定 12%、税理士のクラウド対応率 60代以上 約30%/40代以下 約85%)は、記載した調査時点のものです。公開時に最新の数値をご確認ください。

松添 栞士郎
合同会社Ring's 代表 / 山口・周南で中小企業の経営に伴走
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