「人手不足って言うけど、特にITに詳しい人が来んのよ」。周南の社長さんに、何回も言われます。求人を出しても応募ゼロ。やっと来た人も、半年で辞める。この記事では、正社員で雇う・DXコンサルに外注する・外部CDOを月額で借りる。この3つの手を、費用と中身で見比べます。先に立場を書いておくと、うちはこの「別の手」を仕事にしている会社です。割引いて読んでください。それでも、勘違いの部分は本当に多いんです。
01まず数字ひとつ。IT人材は45万人足りない
経済産業省の「DXレポート」だと、日本のIT人材の不足は2025年時点で約45万人。地方の中小企業では、「DXを進める担当がいない」と答えた会社が78%にのぼります(中小企業白書 2024)。みんな同じ穴を取り合っています。正攻法で「ITに強い人を1人採る」は、いちばん競争が激しい戦い方なんです。
02勘違い①「ITに強い人を1人雇えば解決する」
山口の製造業A社(従業員32名・仮のお話です)。社長は3年前から「うちにもIT担当がいる」と考えていました。地元の求人サイトに「IT人材募集」。応募はゼロ。条件をゆるめて、やっと来たのが20代の若手。「IT系の学校を出ていて、PCは詳しいです」。手取り22万で契約しました。
入社3ヶ月で、こうなりました。
- 業務システムの選定ができない(「どれが良いか分かりません」)
- 現場のおじちゃんに「やり方を変えてください」と言えない
- 経営の話になると、黙ってしまう
半年で辞めました。今は同じ問題が、また振り出しです。
本当は、5つの力が同時にいる
中小企業の「IT担当」は、実はこれだけの力を一度に求められます。
| 必要な力 | 中身 |
|---|---|
| ① 経営目線 | 会社全体の利益の構造が分かる |
| ② 業務理解 | 現場で何が起きてるか、つかめる |
| ③ 技術を選ぶ目 | ITツールの良し悪しを見分ける |
| ④ 現場を動かす力 | ベテランに変化を促せる人間力 |
| ⑤ 実装を進める力 | 計画を立てて、最後までやり切る |
これを20代の若手ひとりに求めるのは、無理があります。5つ全部を持っている40代以上の人は、年収1,000万円以上で、東京の大企業がとっくに押さえています。地方の中小が正社員1人で捕まえるのは、構造的にしんどい。それだけの話です。
▷ 注意:「若い子ならITに強いはず」は、思い込みです。スマホは得意でも、会社のシステムを選んで、現場を動かすのは別の力。年齢と、この5つの力は関係ありません。
03勘違い②「DXコンサルに頼めばやってくれる」
山口の卸売業B社(従業員18名・仮のお話です)。社長は東京のDXコンサル会社に頼みました。初回で「DX診断レポートを200万円で作ります」。契約。3ヶ月後、立派なレポートが届きました。業界トレンド分析50ページ、競合事例30ページ、現状分析と提言40ページ。
「で、何から始めたら?」と聞いたら、「実装支援は別契約です。500万円かかります」。頼んでも、東京から月1回来るだけ。現場の声は聞かない。報告書だけが増える。半年で契約解除。本棚に、200万円のレポートが眠っています。
これ、コンサル会社が悪いわけじゃないんです。多くのDXコンサルは、レポートを作って納品するのが仕事。実行は「お客様で」か「別料金」。大企業なら、レポートを実行できる社員が社内にいます。でも、中小企業にはその実行できる人がいない。だから、絵に描いた餅で終わります。
04勘違い③「うちはDXなんて10年早い」
山口の建設業C社(従業員26名・仮のお話です)。社長の口ぐせは「うちはまだ紙とExcelの世界。DXなんて10年早い」。でも、ちょっと手をつけてみたら、3ヶ月でこうなりました。
- 工事台帳をクラウドに統一 → 全現場でリアルタイムに共有
- 領収書はスマホで撮影 → 会計ソフトに自動で取り込み
- 現場の進捗が、事務所のタブレットで見える
- 月次決算が「翌月15日」から「翌月3日」に短縮
社長のひとこと。「DXって難しいと思ってたけど、要は今やってることをデジタルに置き換えるだけやった」。「IT化」と「DX」を分けて考える人が多いけど、中小企業にとっては同じこと。今やってる仕事を、デジタルでラクにする。それ以上でも以下でもありません。「まだ早い」と言ってる社長ほど、今すぐ動いたほうがいい。
▷ ここがコツ:いきなり全部やろうとしない。「集計に時間がかかってる仕事」を1つだけ選んで、そこから置き換える。C社も、最初は工事台帳ひとつからでした。
053つの手を、表で見比べる(費用つき)
「ITに強い人が来ない」を解く手は、正社員だけじゃありません。手は3つ。月あたりのお金も、正直に並べます。
| やり方 | 月あたりの目安 | 中身 | 中小に合うか |
|---|---|---|---|
| 正社員で 雇う | 80万円〜 (年収1,000万円〜) | 5つの力を1人に。そもそも採用が難しい | ✕ 採用が難所 |
| DXコンサルに 外注する | 200万円 /3ヶ月 | 立派なレポート。実装は別料金・別契約 | △ 報告書で 終わりがち |
| 外部CDOを 月額で借りる | 20〜50万円 | 月2〜4回通って、一緒に手を動かす | ◎ 経営の相棒 になる |
やりたいことで、選ぶ手が変わります。ざっくり、こんな分かれ方です。
お金の余裕がある
実行は社内でできる
一緒にやってほしい
▷ 注意:ここの金額は相場の目安です。会社の規模や関わり方で変わります。実際の費用は、話を聞いたうえで確認してください。
06外部CDOって何? 月いくら?
C社が選んだ「別の手」。それが外部CDOです。CDOは Chief Digital Officer の略で、直訳すると「最高デジタル責任者」。会社全体のデジタル化を、経営の目線で設計して進める役です。トヨタもユニクロも、社内にこの人がいます。
大企業では、CDOは年収数千万円の正社員ポスト。中小企業がそれを正社員で雇うのは無理です。そこで出てきたのが、月額の顧問として、外からCDOを借りる形。月に2〜4回、現場に通って、一緒に進めます。レポートを置いて終わり、ではありません。
費用は月20〜50万円。決して安くありません。でも、ITに強い社員を1人雇うより5分の1以下。しかも、いろんな会社で場数を踏んだ人が、隣で手を動かしてくれます。採用のように「来るか来ないか」で悩む必要もありません。同じ「デジタル化を任せる」でも、月あたりの負担はこれだけ違います。
▷ 注意:金額は相場の目安です。会社の規模や通う回数で変わります。実際の費用は、話を聞いたうえで確認してください。
頼んでから、何が始まる?
「借りる」と決めたあと、いきなりツールを買うわけではありません。順番があります。
07向いてる会社・向いてない会社
正直に言います。外部CDOは、全部の会社に向いてるわけじゃありません。
| 向いてる会社 | 向いてない会社 |
|---|---|
| 社員10〜50名くらい | 5名以下(社長がやれば十分) |
| 社長がDXに本気 | 「とりあえずDXと言いたい」だけ |
| 前向きな若手が現場にいる | 全員「今のままでいい」派 |
| 年に500万くらいのIT投資ができる | IT投資ゼロが基本 |
| 3年かけて変える気がある | 「半年で結果を出せ」と迫る |
かんたんセルフチェック
次のうち4つ以上あてはまったら、外部CDOを考えるタイミングです。
- 求人を出しても「ITに強い人」が来ない
- 自分でITツールを選ぶ自信がない
- 仕事がベテラン社員に属人化している
- 月次決算が、翌月15日より後にしか出てこない
- DXコンサルに頼んだが、何も変わらなかった
- 5年後、会社をもう一段上げたい
▷ ここがコツ:1人の正社員に全部背負わせない。5つの力を1人に求めると、その人がつぶれます。外の力と分担する。これが、いちばん現実的です。
08もう一歩くわしく:用語・つまずき・ケース
用語を、かみ砕く
| 用語 | この記事での意味 |
|---|---|
| CDO | Chief Digital Officer。会社全体のデジタル化を、経営の目線で設計して進める役 |
| 外部CDO(CDO代行) | そのCDOを、月額の顧問として外から借りる形。月に2〜4回、現場に通う |
| IT化とDX | IT化は今の仕事をデジタルに置き換えること。DXは会社の動き方・決め方を変えること。まずIT化でいい |
| 属人化 | 仕事がベテラン1人の頭の中にしかない状態。その人が休むと止まる |
よくあるつまずきと、直し方
| つまずき | 直し方 |
|---|---|
| 「若いからITに強い」で採る | スマホが得意と、業務システムを選んで現場を動かすのは別の力 |
| 立派なレポートで満足する | 実装と伴走がないレポートは本棚行き。「で、何から?」に答える相手を選ぶ |
| 社長が丸投げする | 外部CDOは一緒に進める相手。社長の時間と判断は要る |
| DXを大ごとに考えて動けない | 紙の台帳をクラウドに、領収書をスマホで。置き換えから始める |
ケースで見る(仮の例)
周南の金属加工(社員28名・仮の例)。社長は3年、IT担当の正社員を探していました。来ない。やっと来た人は半年で辞めた。そこで外部CDOを月2回で契約。最初の1か月は、何も新しいものを入れませんでした。やったのは、今の仕事の流れを全部書き出すこと。
書き出してみると、同じ数字を3か所に手で打っていた。まずそこだけをつなぐ。2か月目に、日報をクラウドに。3か月目に、月次の数字が翌月5日に出るようになった。社長の言葉は「大がかりなことは何もしてない。順番を決めてくれただけ」。
外部CDOの値打ちは、魔法のツールではありません。会社全体を見渡して、順番を決めて、現場と一緒に手を動かすこと。その設計する力を、正社員1人分より軽く借りる。そういう道具です。
- 5つの力を1人に求めない。外と分担する
- レポートではなく、一緒に手を動かす相手を選ぶ
- まずIT化(置き換え)でいい。DXは後からついてくる