社長さんと話すと、たいてい2つの悩みが出てきます。「いい人が採れん。応募が来ても即戦力がおらん」。そして「DXって聞くけど、何から手をつけたらええか分からん。社員も乗り気じゃない」。この2つ、別々の問題に見えて、根っこは1つです。片方を直すと、もう片方も動きだす。先に言っておくと、うちはこの2つを仕事にしている会社です。割引いて読んでください。それでも、この「根っこがつながってる」という話は、業種を問わず本当によく当たります。
01若い子は、応募する前に会社を調べている
DXが進んでいない会社は、外から見ると「古い会社」に映ります。今の20〜30代は、応募する前にSNSや口コミで社風を調べます。「PCがまだ古い」「紙とFAXが中心」「残業が多いらしい」。こういう話が伝わった瞬間に、いい候補者はそっと離れていきます。電話も鳴りません。落ちた理由すら、こっちには分からない。
逆に、デジタルが進んでいる会社は、採用が強くなります。同じ求人でも、見え方が変わるからです。
02「採れない」と「進まない」が、なぜ同じ悩みなのか
採用の悩みと、DXの悩み。実は同じ1本の線でつながっています。図にすると、こういうループです。
片方だけ直そうとしても、うまくいきません。求人票だけ立派にしても、中身が古いままなら、入った人が「話が違う」と辞めます。中身(DX)を直すと、見え方が変わり、採用が動く。入口は1つでいいんです。同じ悩みを、どう捉えるかで手の打ち方が変わります。
| 捉え方 | やること | 結果 |
|---|---|---|
| 別々の悩みと 見る | 採用は求人広告、DXはシステム。バラバラに手を打つ | お金も手間も倍。中身が古いままで、また辞める |
| 根っこは1つと 見る | まず中身(DX)を直し、その結果を採用に見せる | 入口が1つ。中身が本物だから、入った人も続く |
03まず、自分の会社をチェックしてみる
次のうち4つ以上あてはまったら、「採用」と「DX」を一緒に考えるタイミングです。
- 求人広告を出しても「応募者の質が低い」と感じる
- 若手社員の離職率が、気になっている
- 社内のDXが「掛け声だけ」で止まっている
- 社長自身がITは苦手で、現場に任せきり
- 「うちの会社のいいところ」を30秒で言えない
- 採用サイトを、1年以上更新していない
▷ ここがコツ:いちばん危ないのは、5つ目です。社長が自分の会社の良さを30秒で言えないと、求人票にも面接にも、それは出ません。まずそこを言葉にするだけで、採用は変わります。
04DXが進むと、なぜ採用が強くなるのか(表)
DXは「システムを入れること」じゃありません。会社の動き方、決め方を変えることです。この変化は、外からも見えます。求人票の中身が、勝手に良くなっていくんです。
| DXで変わったこと | 採用への効き方 |
|---|---|
| チャットを 導入 | 「今どきの会社」に見える。柔軟な働き方の印象も |
| 案件管理を デジタル化 | 「仕事が整理されてる」→ 入社後の不安が下がる |
| 残業を 見える化 | 求人票に「平均残業◯時間」と書けるようになる |
| 数字で 経営判断 | 「ちゃんと数字で話す会社」→ 伸びたい人が集まる |
どれも、採用のための特別な仕掛けじゃありません。仕事をラクにしただけ。なのに、会社の見え方まで変わる。これが「根っこが1つ」ということです。
05直す順番は、いつも「中身が先」
ここを間違えると、せっかくの手間が無駄になります。順番はこの3ステップ。
▷ 注意:順番を逆にしないでください。中身が伴わないのに求人票だけ良くすると、入った人がすぐ「話が違う」と辞めます。良い採用は、良い中身の"結果"です。
06求人票は、AIに書き直してもらう手もある
「条件だけ並べた求人票」は、若い子の心を動かしません。「経験者優遇・要普通免許」。それだけだと、伝わらない。かといって、社長が文章を練る時間もない。ここは、AIに下書きを頼む手があります。今の求人票を、そのまま貼るだけです。
▷ 注意:給料・勤務時間・休日の数字だけは、最後に必ず自分で確認を。AIは、もっともらしい数字を勝手に入れることがあります。ここは人の目で。
07仮のケース:山口の製造業32名の半年
実際の案件をもとにした、仮のお話です(特定の会社の話ではありません)。着手する前は、こんな状態でした。
- 日報は手書き。集計に、週3時間かかっていた
- 採用サイトは7年更新なし。スマホで見づらい
- 直近2年で、若手3名が離職
ここから半年、中身を先に直して、あとで採用に見せました。
いちばん変わったのは、応募数でした。
社長のひとこと。「採用の話と経営の話が、初めてつながった」。中身を先に変えたから、外に見せるものが本物になった。順番の力です。
08もう一歩くわしく:用語・つまずき・ケース
用語を、かみ砕く
| 用語 | この記事での意味 |
|---|---|
| 見え方 | 応募前の下調べで、候補者に伝わる会社の印象。公式サイト・口コミ・SNS |
| 中身 | 実際の仕事の回し方。紙かクラウドか、残業はどうか、属人化しているか |
| 求人票の「働く1日」 | 条件の羅列ではなく、入社後の1日が想像できる書き方 |
| 負のループ | DXが遅れる→古く映る→採れない→余力がない→DXがまた止まる、の循環 |
よくあるつまずきと、直し方
| つまずき | 直し方 |
|---|---|
| 求人票だけ立派にする | 中身が古いままだと、入った人が「話が違う」と辞める。中身が先 |
| 採用とDXを別の担当に分ける | 根っこは一つ。一緒に棚卸しする |
| 社長が自社の良さを30秒で言えない | ここが言えないと求人票にも面接にも出ない。まず言葉に |
| AIに書かせた求人票を確認しない | 給料・時間・休日の数字は、AIが盛ることがある。最後は人の目 |
ケースで見る(仮の例)
周南の食品製造(社員32名・仮の例)。社長の悩みは「若手が来ない」。求人サイトを増やし、写真を撮り直した。応募はゼロのまま。ある日、若い社員に「会社名で検索してみて」と頼んだ。出てきたのは、7年前のホームページと、FAXの注文書の画像。
順番を変えました。まず中身。紙の日報をクラウドに、集計の週3時間をゼロに。次に言葉。「うちの良さ」を社長が書き出す。最後に外へ。求人票を「働く1日」で書き直し、採用ページを作り直した。
半年後、応募が月1件から月4件に。入った人が言ったのは「日報がスマホでできるって書いてあったのが決め手」。採用のためにやったことは、何もない。仕事をラクにしただけ。これが「根っこは一つ」の意味です。
- 直す順番は、中身→言葉→外。逆にしない
- 会社名でスマホ検索。若い子が見る画面を見る
- DXは採用の仕掛けではない。仕事をラクにした結果が見え方になる