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登録支援機関に任せとけば大丈夫。特定技能・介護の受け入れで見落とす3つのこと

松添 栞士郎 🗓 2026.08.07 ⏱ 約10分
特定技能 登録支援機関に丸投げ。
そこに潜む3つの落とし穴。
目次
  1. まず、受け入れの今を数字で見る
  2. 落とし穴①「登録支援機関に任せとけば、大丈夫」
  3. 支援義務は10項目(採用は入り口)
  4. 受け入れから支援までの流れ(図解)
  5. 落とし穴②「5年後のことは、そのとき考える」
  6. 自社支援化という道(12ヶ月)
  7. もう一歩くわしく:用語・つまずき・ケース
  8. よくある質問
  9. 最後に:制度は変わる、必ず一次情報で

「特定技能で外国人さんを入れたけど、支援機関に丸投げで、正直よう分からんのよ」。介護施設の経営者と話すと、ほんとよく出る言葉です。人が来ない、辞める、また足りない。その繰り返しの中で、特定技能に手を伸ばした。でも、任せきりのまま3年。この記事は、そんな施設長さんに向けて書きました。丸投げが、じつは法律のリスクと5年後の崖を抱え込むこと。そして「自社支援化」という、もう一つの道を、順にいきます。

01まず、受け入れの今を数字で見る

3.95倍介護の有効求人倍率2024年4万人超特定技能・介護 累計出入国在留管理庁 202467%支援の中身を説明できない介護労働安定センター 2024
図:受け入れは当たり前に。でも、説明できない経営者が7割弱

先に、数字を少しだけ。介護業界の有効求人倍率は、約3.95倍(2024年)。日本人の応募は、ほぼ来ません。特定技能で来日した外国人の介護人材は、累計4万人を超えました(出入国在留管理庁・2024年)。受け入れ自体は、もう当たり前になりつつあります。

気になる調査もあります。特定技能の受け入れ側でありながら、支援の中身を自分では説明できない経営者が、約67%(介護労働安定センター・2024年調査)。任せているつもりが、任せきりになっている。ここに、落とし穴があります。

02落とし穴①「登録支援機関に任せとけば、大丈夫」

山口の介護施設A社。特定技能スタッフ3人を受け入れて、施設長は「登録支援機関に月5万円で任せている」と安心していました。ところが、ある日、入管の調査が入ります。

指導と是正命令が出て、追加対応に約200万円。スタッフ1人は、辞めていきました。施設長のことばが、胸に残ります。「任せていると思っていたのに、任せきりにしていたんです」。

ここが、いちばん大事なところです。登録支援機関に委託するのは、法律上OKです。ただ、支援の義務を負う主体は、受け入れ機関である施設のまま。委託しても、責任は消えません。どこまでが施設の責任か、表で見てください。

役割施設(受け入れ機関)登録支援機関
支援義務の主体負う(委託しても動かない)実務を代行するだけ
在留資格の更新管理施設の責任手続きの補助まで
入管への届け出施設の責任(住居変更など)作成の支援まで
支援記録の保管施設にも保管義務あり控えの提供

登録支援機関が廃業したり、担当者次第で支援の質がばらついたりすると、そのしわ寄せは施設に来ます。入管に説明するのも、施設です。

▷ 注意:「委託しているから、うちは関係ない」は通用しません。まず、支援記録の控えが施設に残っているか。今日、確認してみてください。ここが空っぽだと、調査で一番先に指摘されます。

03支援義務は10項目(採用は入り口)

山口の介護施設B社。特定技能のスタッフを採用して、施設長は「あとは現場で頑張ってもらう」と思っていました。3ヶ月後、こんな相談が出てきます。銀行口座を作れない、住居の更新でトラブル、健康保険や年金が本人任せ。ストレスで仕事に集中できず、6ヶ月で離職。施設長のことば。「採用がゴールだと思っていたら、本当のスタートだったんです」。

特定技能の外国人を受け入れる施設には、法令で10項目の支援義務があります(出入国管理及び難民認定法)。採用は、その入り口にすぎません。

  1. 事前ガイダンス/入国前に、制度・職場・生活の説明
  2. 出入国時の送迎/来日時・帰国時の空港送迎
  3. 住居の確保/家賃の保証人も含めたサポート
  4. 生活オリエンテーション/公共サービス・行政手続きの案内
  5. 公的手続きの同行/住民登録・年金・健康保険など
  6. 日本語学習の機会/教材や教室の紹介
  7. 相談・苦情への対応/母国語で対応できる窓口
  8. 日本人との交流促進/地域行事への参加支援
  9. 転職の支援/受け入れが終わるときの転職活動サポート
  10. 定期面談/3ヶ月に1回の面談と、記録の保存

この10項目、すべて施設の責任で実施します。登録支援機関に委託しても、義務の主体は施設のまま。ここは、外せない前提です。

▷ ここがコツ:「採用に力を入れて、支援は現場任せ」だと、必ず辞められます。意識を、採用3・支援7に。入った後のほうが、はるかに大事です。

04受け入れから支援までの流れ(図解)

10項目は、バラバラにあるわけではありません。受け入れの時間の流れに沿って、こう並びます。全体を先に見ておくと、抜けに気づけます。

STEP 1
事前ガイダンス
入国前に、制度・職場・生活を説明する。ここが最初の接点。
STEP 2
来日・送迎・住居
空港送迎、家賃の保証人を含めた住居の確保まで。
STEP 3
生活オリエン・同行
住民登録・年金・健康保険の手続きに同行する。
STEP 4
就労開始・日本語
相談窓口を用意し、日本語学習の機会も紹介する。
STEP 5
3ヶ月ごとの定期面談
面談と記録の保存が義務。控えは施設に残す。
STEP 6
在留更新・期限管理
更新の管理と入管への届け出。5年の期限も、ここで見る。

▷ 注意:STEP5・6は、あとで調査に響く部分です。面談記録の控えと、各スタッフの在留期限。この2つは、施設の手元で必ず管理してください。

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05落とし穴②「5年後のことは、そのとき考える」

入国3人を同時に採用〜4年半「そのうち考える」で時間が過ぎる5年3人同時に在留期限。一気に戦力が抜ける今できること各スタッフの在留期限をカレンダーに書き出す
図:特定技能1号は最長5年。同時に採ると同時に抜ける

山口の介護施設C社。特定技能1号のスタッフ3人を採用して、4年半。施設長が「もうすぐ5年やな、どうしよう」と気づいたとき、崖はすぐそこでした。

施設長のことば。「あと半年で3人が一斉にいなくなる。今から採用しても、間に合わん」。

介護分野には、制度上の特殊な事情があります。介護は、特定技能2号の対象外とされてきました(建設・造船などが2号の対象)。長く働いてもらうには、別の道が要ります。介護福祉士の資格を取って、在留資格「介護」に移るのが、その代表的なルートです。ここは制度が動きやすい部分なので、必ず最新の情報で確認してください。

5年の期限が来たとき、進む道は分かれます。図で見てください。

特定技能1号・5年の期限が来たら
本人が帰国を
希望する
帰国
(後任の採用を早めに)
長く働いて
ほしい
介護福祉士 →
在留資格「介護」へ
介護は2号の
対象外
2号での延長は
できない前提で動く

▷ 注意:在留資格の要件や移行の条件は、制度改正で変わります。どの道を選ぶかは、必ず入管や専門家に最新情報を当てながら決めてください。

崖を避けるための考え方は、3つです。

  1. 採用時期を分散する/同期入社をやめて、1年ずらして採る
  2. 帰国時期に備える/各スタッフの帰国半年前から、後任の採用を始める
  3. 長期の在留を早めに検討/介護福祉士の資格取得支援などを、早めに動かす

▷ 注意:在留期間や資格の要件は、年度や制度改正でごろっと変わります。5年後の計画は、必ず入管や専門家に最新情報を当てながら立ててください。「そのとき考える」が、いちばん危ない。

任せている、と
任せきり、は別物
いざというとき、全部が施設に返ってくる。

06自社支援化という道(12ヶ月)

3つの落とし穴を見れば分かる通り、特定技能の活用は「受け入れた後の運用」が9割です。そこで提案したいのが、「自社支援化」という道。登録支援機関に丸投げする状態から、少しずつ、自分の施設で支援を回せるようにしていく考え方です。

1〜3ヶ月
知識習得
10項目の支援義務と、関連する法令を理解する。
4〜6ヶ月
体制づくり
担当を決め、支援記録のテンプレートを整える。
7〜9ヶ月
並行運用
登録支援機関と並行しながら、少しずつ自社で回す。
10〜12ヶ月
完全移行
自社だけで運用。登録支援機関を卒業する。

委託を続ける場合と、自社支援化した場合。何が違うのかを、表で見てください。

くらべる登録支援機関に委託自社支援化
月のコスト5万円/人0円/人
はじめの手間少ない(丸投げできる)多い(体制づくりが要る)
支援のノウハウ施設に残らない施設に残る
いざという時廃業・質のばらつきに左右される自分の施設で回せる

12ヶ月後には、月5万円/人の委託費が要らなくなります。年間で見れば、複数人分のコスト削減。そのうえ、支援のノウハウが施設の中に残ります。人任せだった部分が、自社の力に変わっていく。ここが、いちばんの狙いです。

▷ ここがコツ:いきなり全部を自社で、は無理があります。まず10項目のうち「自分で説明できる項目」を1つずつ増やす。説明できる数が、そのまま自社支援化の進み具合です。

07もう一歩くわしく:用語・つまずき・ケース

用語を、かみ砕く

用語この記事での意味
登録支援機関特定技能の支援を外注する先。委託しても、支援義務の主体は受け入れ機関(施設)のまま
支援義務10項目事前ガイダンスから3か月ごとの定期面談まで。法令で決まっている
支援記録の控え施設側にも保管義務がある。支援機関任せにしない
5年の崖特定技能1号の在留は最長5年。同時に採ると同時に抜ける

よくあるつまずきと、直し方

つまずき直し方
委託したから責任がなくなると思う主体は施設。入管に説明するのは施設
支援記録を施設に残していない控えの保管義務は施設に。テンプレートを整える
在留期限を書き出していない各スタッフの期限をカレンダーに。崖は書き出した瞬間に見える
「5年後はそのとき考える」3人同時に採れば3人同時に抜ける。採用時期をずらす
1〜3か月知識習得:10項目と関連法令を理解4〜6か月体制づくり:担当を決め、記録テンプレートを整える7〜9か月並行運用:支援機関と並行しながら自社で回す10〜12か月完全移行:登録支援機関を卒業
図:自社支援化の12か月

ケースで見る(仮の例)

山口県内の介護施設(仮の例)。特定技能4名を受け入れ、支援は登録支援機関に委託。ある日、支援機関から「事業を縮小する」と連絡。引き継ぎの準備はゼロ。支援記録の控えも施設にはなかった。

やったのは自社支援化の前倒し。1か月で10項目と法令を理解し、2か月目に担当を決めて記録のテンプレートを整え、3か月目から並行運用。半年で自社だけで回せるようになった。

同時に、在留期限を全員ぶんカレンダーに書き出した。4名のうち3名が同じ年に期限を迎えることが分かり、次の採用時期をずらした。見えていなかった崖が、書き出した瞬間に見えた。

▷ ここだけは
  • 委託しても主体は施設。記録の控えは施設に
  • 在留期限をカレンダーに。崖を見える化
  • 自社支援化は12か月で。並行運用から

08よくある質問

登録支援機関に委託すれば、施設の責任はなくなる?
なくなりません。委託は法律上OKですが、支援義務を負う主体は受け入れ機関である施設のままです。登録支援機関が廃業しても、入管に説明するのは施設。支援記録の控えの保管義務も、施設にあります。
支援義務は、全部で何項目?
10項目です。事前ガイダンス、送迎、住居確保、生活オリエン、公的手続きの同行、日本語学習の機会、相談対応、交流促進、転職支援、3ヶ月ごとの定期面談。すべて施設の責任で実施します。
特定技能1号は、何年まで働ける?
在留できる期間は、最長5年です。5年を過ぎると、帰国するか、別の在留資格に移る必要があります。3人を同期で採ると、5年後に3人分が一気に抜けます。採用時期の分散を考えてください。
介護でも、特定技能2号になれる?
介護は特定技能2号の対象外とされてきました。長く働いてもらうには、介護福祉士の資格を取って在留資格「介護」に移るのが代表的なルートです。制度が動きやすい部分なので、最新情報の確認を。
登録支援機関への委託費は、どれくらい?
目安は月5万円/人です。人数が増えると、月々の固定費として効いてきます。自社支援化を進めると、この委託費を抑えつつ、支援のノウハウが施設に残ります。

09最後に:制度は変わる、必ず一次情報で

今日、確認できることを3つだけ。支援記録の控えが施設に残っているか。10項目のうち自社で説明できるのは何個か。各スタッフの在留期限を、カレンダーに書き出したか。5年の崖は、書き出した瞬間に見えてきます。

▷ 必ず確認を:特定技能の要件・在留期間・支援義務・対象分野は、制度改正でたびたび変わります。この記事の内容は執筆時点の整理です。実際に動く前に、入管(出入国在留管理庁)や入管業務の専門家で、必ず最新の情報を確認してください。

外国人スタッフが安心して働けて、長く定着する施設になる。それは地域に、介護という仕事の受け皿が残ることでもあります。人手不足の山口で、施設が踏ん張れること。それ自体が、地域の若い人にとっての選択肢になります。

松添 栞士郎
合同会社Ring's 代表 / 山口・周南で中小企業の経営に伴走
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