「人が足りん」「求人を出しても来ん」「採れても、すぐ辞める」。地方の社長さんと話すと、9割がこの3つを言います。これは景気の話ではありません。日本の働く人の数は、この先も大きく減っていく見込み。「景気が戻れば人が来る」では、もう追いつきません。だから、「採る」一本やりから抜け出す。採る・育てる・諦める。この3つで、会社を組み立て直します。
01「採る一本」から、抜け出す
人手不足は、この先10年以上続く構造の変化です。「いつか人が来れば」と願っても、状況は変わりません。日本の働く人の数は、2030年までに約650万人減るとも言われます。減っていく方向は、もう動かせません。
でも、3つで組み立て直した会社は、この時代だからこそ強くなれます。本当に大事な仕事に、本当に必要な人を回せるようになるからです。
▷ 注意:「2030年までに約650万人減」という数字は、試算の前提や範囲によって幅があります。減少が続く向きは変わりませんが、正確な数字を使うときは出典を確認してください。
023つの方向を、表で見比べる
図:3つは選ぶものではなく、組み合わせるもの
まず全体像を、表で押さえます。3つは、どれか1つを選ぶものではありません。組み合わせて使うものです。
| 方向 | こんな時に効く | やること | 気をつけること |
| 採る | 欠員が出た。現場が回らない | 会社の顔を出す。相場の+10〜20%。カジュアル面談。外国人も選択肢に | コストは上がる。定着しないと消耗する |
| 育てる | 即戦力が、採れない | 未経験者を半年で戦力にする仕組み。マニュアル。毎月の面談 | 育つ間、現場が一時的に薄くなる |
諦める (自動化) | そもそも仕事の量が多すぎる | やらない仕事を決める。クラウド・AIで自動化。会議を減らす | 何を残すかの見極めが要る |
どこから手をつけるかは、今いちばん困っていることで決めます。
「今、いちばん困っているのは?」で入口を選ぶ
そもそも仕事の
量が多すぎる
まず「諦める」
(自動化)
この3つを、同時に動かす。順に見ていきます。
03採る ── やめなくていい。ただ「期待値」を変える
「採る」を諦める必要は、ありません。むしろ、要ります。ただし、今までと同じやり方では、もう結果は出ません。ここだけは、はっきりしておきます。
今まで、こうやってませんでしたか。
- 求人広告に、月10万円
- 面接で「やる気のある人」を選ぶ
- 給料は、地域の相場の平均
これからは、こう変えます。
- 会社の「顔」を出す。採用ブランディング。社長がどんな人で、どんな想いでやってるか
- 面接の前に、雑談から。いきなり面接ではなく、まずカジュアル面談で「人」を知ってもらう
- 給料は、相場の+10〜20%。ここをケチると、そもそも土俵に乗れません
- 外国人雇用も、選択肢に。日本人だけで完結させようとしない
- ターゲットを、広く。年齢も性別も、しぼりすぎない
「採る」のコストは、確実に上がります。それを受け入れる覚悟が、出発点です。
▷ ここがコツ:いきなり全部は変えられません。まず一つ。「面接の前に、15分の雑談を入れる」だけでも、辞退はぐっと減ります。お金のかからないところから始めてください。
04育てる ── 即戦力を諦めて、社内で育てる
多くの社長がハマる罠が、これです。「即戦力が欲しい」。気持ちは、痛いほど分かります。でも、即戦力は東京の大企業が押さえています。地方の中小が即戦力を採るのは、構造として難しい。ここで消耗しても、勝てません。
では、どうするか。答えは、「未経験者を、半年で戦力にする仕組み」を社内に作ることです。特別な才能はいりません。仕組みです。
- 業務マニュアルを整える。「あの人しか分からない」を、なくす
- 教え方を、仕組みにする。「ベテランの背中を見て覚えろ」から卒業する
- 仕事を、3ヶ月で覚えられる単位に分ける。丸ごと渡さず、小さく渡す
- 毎月、振り返りの面談をする。15分でいい。放置しないことが定着につながる
これを、その場しのぎでなく仕組みとして作る。一度作ってしまえば、次からは「育てられる人」を採ればよくなります。採用のハードル自体が、下がります。
▷ 注意:マニュアルは、完璧を目指すと一生できません。まず一つの仕事だけ、A4一枚で。それを、新しく入った人に直してもらう。この回し方がいちばん続きます。
「うちは、採る・育てる・諦めるの、どこが弱い?」
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05諦める(自動化)── 「やらない仕事」を決める
図:「やらない仕事」を決める。会議の例
3つの中で、いちばん難しい方向です。「人が足りん」と言いながら、毎日やってる仕事を全部そのまま維持しようとする会社が、本当に多い。でも、人が足りないなら、仕事の量を減らすしかありません。ここから逃げられません。
たとえば、こういう「諦める」があります。
- 顧客対応:もうからない取引先を、整理する
- 商品ライン:売れ筋の上位80%に絞る。ロングテールを切る
- 営業エリア:遠方を外して、近いところに集中する
- 事務作業:クラウドツールやAIで、自動化する
- 会議:月10時間を、月3時間に減らす
「これも大事」「あれも大事」と全部抱えていたら、人手不足は永遠に終わりません。社長の仕事は、「やらない」を決めることです。増やすことではありません。切った先に、空いた手が返ってきます。
063つを、同時に動かす
大事なのは、3つの組み合わせです。どれか一つに頼ると、こうなります。
- 「採る」だけに頼る:コストが上がり続けて、しかも定着しない
- 「育てる」だけに頼る:育てている間、現場が回らない
- 「諦める」だけに頼る:売上が、じわじわ縮む
3つを同時に動かすから、この時代を乗り切れます。あなたの会社の比率は、どうですか。たとえば「採る4割/育てる3割/諦める3割」。こんなバランス感覚で、一度組み立て直してみてください。
▷ ここがコツ:正解の比率は、会社ごとに違います。今できていない軸から手をつけるのがコツ。ほとんどの会社は「諦める」が0割です。まずそこに、1割を作るだけで景色が変わります。
07もう一歩くわしく:用語・つまずき・ケース
用語を、かみ砕く
| 用語 | この記事での意味 |
|---|
| 採る・育てる・諦める | 人手不足を組み立て直す3つの方向。選ぶものではなく、組み合わせるもの |
|---|
| 期待値を変える | 「採る」をやめない代わりに、やり方を変える。会社の顔・カジュアル面談・相場+10〜20% |
|---|
| 育てる仕組み | 未経験者を半年で戦力にする社内の仕組み。マニュアル・教え方・仕事の単位 |
|---|
| 諦める(自動化) | やらない仕事を決めること。もうからない取引・ロングテール・会議・事務作業の自動化 |
|---|
よくあるつまずきと、直し方
| つまずき | 直し方 |
|---|
| 「採る」一本で消耗する | 3軸を紙に書き、0に近い軸から手をつける |
|---|
| 即戦力を東京の大企業と取り合う | 未経験者を半年で戦力にする仕組みを作る |
|---|
| 仕事の量を減らさずに人だけ探す | やらない仕事を決める。会議・商品ライン・エリア |
|---|
| マニュアルを完璧に作ろうとする | A4一枚から。新しく入った人に直してもらう |
|---|
図:比率を組み替えた会社(仮の例)
ケースで見る(仮の例)
周南の配管工事(社員14名・仮の例)。3軸を紙に書くと、採る10割・育てる0・諦める0。ベテランが抜けると回らない構造でした。
まず「諦める」に1割。遠方の現場を外し、月10時間の会議を3時間に。次に「育てる」。一つの作業をA4一枚にして、新人に直してもらう回し方に。「採る」は続けたが、求人票を「働く1日」で書き直し、給料を相場+10%に。
1年後、比率は採る5・育てる3・諦める2。人数は1人しか増えていません。でも現場は回るようになった。増えたのは人ではなく、仕組みと余白です。
▷ ここだけは- 3軸を紙に書く。0に近い軸から
- 即戦力を諦めて、半年で戦力にする仕組みを
- 仕事を減らす勇気。それも「採用」の一部
08よくある質問
何から手をつければいい?
まず3軸を紙に書き出して、いちばん0に近い軸から着手してください。ほとんどの会社は「諦める」が0割です。そこに1割を作るだけで、動きが変わります。
「諦める」って、売上を捨てること?
違います。もうからない取引や、売れないロングテールを整理して、空いた手を大事な仕事に回すこと。事務作業をAIで自動化するのも「諦める」の一つです。売上を守るための整理です。
育てる仕組みは、何から作る?
一つの仕事を、A4一枚のマニュアルにするところから。完璧は目指さない。新しく入った人に直してもらう回し方が、いちばん続きます。
外国人採用も「採る」に入る?
入ります。母集団を広げる一手です。ただし「安く人手が増える」で始めると失敗します。受け入れ体制づくりが先。順番を、間違えないでください。
09今日からの一歩
むずかしく考えなくて大丈夫です。今日やることは、この順番で3つだけ。
STEP 1
紙に、3つ書き出す
採る・育てる・諦める。今の比率は、何割ずつか。
STEP 2
0に近い軸を探す
たいていは「育てる」か「諦める」。そこが伸びしろ。
STEP 3
来週やる1つを決める
マニュアルA4一枚。会議を1本やめる。小さくていい。
3つで組み立て直した会社は、人手が足りない時代だからこそ強くなります。少ない人で、大事な仕事だけに集中できるようになるからです。そういう会社が地元に増えれば、若い子が「ここで働きたい」と思える場所も増えます。