「山口で人が採れん」「採れても、定着せん」。県内で経営している方なら、一度は口にした言葉やと思います。山口の中小企業を回っていると、業種を問わず、ほぼ全部の社長がこの悩みを抱えています。これは景気の問題ではありません。構造の問題です。だから、やり方を変えないと届かない。この記事では、なぜ山口で採れないのかを整理して、明日から動かせる5つの実践策、エリア別の傾向、よくある質問までまとめます。周南・下松・防府・宇部などにも触れます。
01なぜ「山口×人材」が、こんなに難しいのか
まず、なぜ採れないのか。背景にある構造を、3つに分けて置いておきます。ここが分かると、打ち手がぶれません。
構造① 若い子が、県外に出ていく
高校や大学を出た若者の多くが、進学や就職で広島・福岡・関西・首都圏へ出ます。問題は「出ていくこと」そのものより、戻ってくる受け皿が地元で見えていないこと。魅力的な働き口が、県外に出た学生に届いていないんです。
構造② 「即戦力」を、県外の大企業と取り合っている
多くの会社が「経験者がほしい」「即戦力がほしい」と言います。気持ちは分かります。でも、即戦力は待遇で勝る都市部の大企業や、地元の大手・公務員が先に押さえています。同じ土俵で取り合っても、中小企業が勝てる構造になっていないんです。
構造③ 「会社の顔」が見えていない
求人広告にお金をかけても応募が来ない。その多くは、広告の中身ではなく「この会社で働く自分」が想像できないことが原因です。社長がどんな人で、どんな想いで、どんな仲間と働いているか。その顔が見えない会社は、条件が同じなら選ばれません。
▷ 注意:全国の労働人口の見通しは、試算によって数字に幅があります。減っていく向きは共通ですが、正確な数字を引くときは出典で確認してください。
02乗り越える5つの実践策(全体像)
ここから、明日から動かせる5つの実践策です。まず、全体を先に見ておきます。この順番で手をつけると、無理がありません。
5つ全部を一度にはできません。今の悩みで、最初の一手を選びます。
そもそも来ない
会社の顔を発信
すぐ辞める
育てる仕組み
母集団が細い
外国人材
03実践策① 会社の「顔」を発信する
最初の一歩は、求人媒体を増やすことではありません。自社の「顔」を言葉にして、発信することです。具体的には、こういう情報を、自社サイトやSNS、採用ページで、続けて出していきます。
- 社長の想い・創業のストーリー(なぜこの事業をやってるのか)
- 実際に働く社員の声・1日の仕事の流れ
- 入社後に身につくスキル、この先のキャリアの見え方
- 地域とのつながり、その会社「らしさ」
給料や休日の勝負では、大企業に勝てません。でも「ここで働きたい」という共感は、地方の中小企業でも作れます。むしろ、顔が見える分だけ有利です。
▷ ここがコツ:立派な採用サイトはいりません。まず、社長がスマホで「なんでこの仕事を始めたか」を3分しゃべって、それを文字にするだけ。飾らない言葉のほうが、若い子には届きます。給料も、出せる範囲で相場の+10〜20%を目安に。ここをケチると、そもそも土俵に乗れません。
04実践策② 地元の学生と「接点」を持つ
県外流出を嘆く前に、地元にいるうちに接点を作ること。山口県内の高校生・大学生・専門学校生と、就活の前から関係を作っておくのが効きます。インターン、職場見学、カジュアル面談、地域のイベントへの参加。「採用」の手前の接点です。
Ring'sが運営する人材紹介アプリ「社長の顔」は、まさにこの課題に取り組むサービスです。周南圏域の学生と地元企業の社長を、直接つなぐ。面接の前に「人」を知ってもらう。周南圏域に特化した採用支援「社長の顔」では、紹介手数料なしのモデルで、地元企業の採用を後押ししています。
▷ ここがコツ:接点は、いきなり採用の話にしない。職場を見せて、飯を食う。それくらいでいい。「この社長、ええ人やな」が、いちばんの採用活動になります。
05実践策③ 外国人材・特定技能という選択肢
日本人だけで採用を完結させようとすると、そもそもの母集団が先細りします。製造・建設・介護・農業・外食など、山口でも特定技能をはじめとする外国人材が、現場の中核を担う場面が増えています。
ただし「登録支援機関に丸投げ」は、失敗のもとです。受け入れの体制、生活の支援、社内の受け入れ意識まで含めて設計する。ここまでやって、はじめて定着します。詳しくは日本人と外国人、後悔しない5つの見きわめもあわせて読んでみてください。
▷ 注意:特定技能の対象分野や在留の要件は、制度改正で変わります。採る前に、出入国在留管理庁など公式の最新情報で確認してください。あわせて、「安く人手が増える」で始めないこと。日本語教育や生活サポートの手間まで見て、体制を作ってから採る。順番を間違えないでください。
06実践策④⑤ 育てる仕組みと、やらない仕事
実践策④ 「育てる仕組み」に投資する
即戦力が採れないなら、未経験者を半年で戦力にする仕組みを社内に作る。これが、地方中小企業の現実的な勝ち筋です。特別な才能はいりません。仕組みです。
- 業務マニュアルを整える(「あの人しか分からない」を、なくす)
- 教え方を、仕組みにする(「背中を見て覚えろ」から卒業する)
- 仕事を、3ヶ月で覚えられる単位に分ける
- 毎月、振り返りの面談をする
一度、仕組みを作ってしまえば、次からは「育てられる人」を採ればよくなります。採用のハードルそのものが、下がります。
実践策⑤ 「やらない仕事」を決める
いちばん見落とされがちな打ち手が、これです。「人が足りん」と言いながら、全部の仕事を維持しようとしていないか。人手が足りないなら、仕事の量を減らすしかありません。
- 顧客対応:もうからない取引を、整理する
- 商品・サービス:売れ筋の上位に絞って、ロングテールを切る
- 営業エリア:遠方を外して、近いところに集中する
- 事務作業:クラウドツールやAIで、自動化する
- 会議:時間と回数を、半分以下に
社長の仕事は、「やる」を増やすことではなく「やらない」を決めること。これも、立派な人材戦略です。
5つの実践策は、接点から定着まで、ひとつながりです。全体を図で見ておきます。
07エリア別の、人材の傾向(比較表)
同じ「山口の人材」でも、エリアで労働市場の顔つきが違います。自社の場所に近い特徴を踏まえて、打ち手を選んでください。
| エリア | 産業の顔つき | 効く打ち手 |
|---|---|---|
| 周南・下松・光 | 製造業・コンビナート系が集まる。技術系・現場人材の需要が高い | 地元学生との早い接点づくり |
| 山口市・防府 | 県庁所在地。事務・サービス職の競合が多い | 待遇より「働く意味」を打ち出す採用ブランディング |
| 宇部・山陽小野田 | 化学・製造の基盤。中堅技術者の高齢化が進む | 育成の仕組み化と、外国人材の活用 |
| 岩国 | 広島都市圏との人材の取り合い | 県外通勤・移住者も視野に入れた発信 |
| 萩・長門 | 人口減少が顕著 | UIターン・副業人材・業務の取捨選択をセットで |
08もう一歩くわしく:用語・つまずき・ケース
用語を、かみ砕く
| 用語 | この記事での意味 |
|---|---|
| 会社の顔 | 社長の想い・社員の声・働く1日。応募前に候補者が見るもの |
| 接点 | 採用の手前で、地元の学生と関係を作ること。インターン・職場見学・カジュアル面談 |
| 即戦力の取り合い | 県外の大企業と同じ土俵で戦うこと。構造的に勝ちにくい |
| やらない仕事 | 人が足りないなら、仕事も減らす。その決断 |
よくあるつまずきと、直し方
| つまずき | 直し方 |
|---|---|
| 求人媒体を増やすことから始める | 先に自社の顔を言葉にして発信する |
| 就活の時期に初めて学生と会う | その前から接点を。採用の手前の関係づくり |
| 外国人材を登録支援機関に丸投げ | 受け入れ体制と社内の説明が先 |
| 「給料が安いから採れない」で止まる | 条件が同じでも顔が見えない会社は選ばれない。言葉が先 |
ケースで見る(仮の例)
萩市の水産加工(社員18名・仮の例)。「若い子が県外に出ていく」と嘆いていました。やったのは5つのうち、まず①と②。社長の想いと社員の声を月2回、自社サイトとSNSに。地元の高校に職場見学の受け入れを申し出た。
1年で、見学に来た高校生のうち2人が入社。どちらも「家から近い会社で、何をやっているか見えたから」。給料は変えていません。見えるようにしただけ。
エリアで労働市場の顔つきは違います。でも共通するのは、顔が見えない会社は選ばれない、ということ。打ち手の一つ目は、いつも「顔」です。
- 発信が先、媒体は後。顔が見えない会社は選ばれない
- 就活の前に接点。見学・インターン・面談
- 採る以外の道(外国人材・育てる・やらない仕事)も同時に
09よくある質問
10今日からの一歩
むずかしく考えなくて大丈夫です。今日やることは、一つだけ。
- 社長の「なぜ」を、3分しゃべる。なんでこの会社をやってるのか。スマホに録って、文字にする。それが採用ページの芯になります
- 地元の学生と、接点を1つ作る。職場見学でも、カジュアル面談でも。採用の手前から始める
- 3軸を、紙に書く。採る・育てる・諦める。今の比率と、足りない軸を1つ見つける
山口の人材不足は、この先10年以上続く構造の変化です。「いつか人が来れば」と願っても、状況は変わりません。でも、採用・育成・外部活用を組み合わせて組み立て直した会社は、この時代だからこそ強くなれます。そういう会社が地元に増えれば、若い子が「山口で働きたい」と思える場所も増えます。