「ものづくり補助金と新事業進出補助金、うちはどっち?」。周南でよく聞かれた質問です。2026年、この2つは1つに統合されました。この記事では、新しい制度の中身・どの枠を選ぶか・いくら出て何に使えるか・申請の流れ・落ちる理由まで、順番に、わかりやすくまとめます。
01ものづくりと新事業進出は、統合された
2026年まで、よく似た補助金が2つありました。「ものづくり補助金」と「中小企業新事業進出補助金」。どちらも設備投資に使えて、名前も中身も近い。周南の社長さんからも「うちはどっちを出せばええん?」という質問が、いちばん多かったところです。
2026年度、この2つは「新事業進出・ものづくり商業サービス補助金」という1つの制度に統合されました。第1回の公募要領は、2026年6月29日に公開されています。もとの中小企業新事業進出補助金のほうは、第4回の公募で受付を終了。これからの新規の申請は、統合された新しい制度が窓口になります。
▷ 注意:制度が大きく変わったばかりです。ネットの古い記事は、まだ「2つの補助金のどっち?」という前提で書かれているものが多い。去年の記憶や古い資料で判断せず、必ず最新の公募要領で確認してください。
02新しい制度は「3つの枠」。表で見比べる
1本にまとまっても、中身は3つの枠に分かれています。やりたいことで、選ぶ枠が変わります。まずは表で見比べてください。
| 枠 | こんな会社向け | 補助上限 | 賃上げ特例 | 補助率 |
|---|---|---|---|---|
| 革新的新製品・ サービス枠 | 今の事業を、もっと強くしたい(旧・ものづくり補助金に近い) | 2,500万円 | 3,500万円 | 中小 1/2 (地域特例 2/3) 小規模 2/3 |
| 新事業進出枠 | 別の分野に、新しい柱を立てたい | 7,000万円 | 9,000万円 | 中小 1/2 (地域特例 2/3) |
| グローバル枠 | 海外の市場を狙いたい | 7,000万円 | 9,000万円 | 中小 2/3 |
選び方はシンプルです。やりたいことで、枠が決まります。
もっと強くしたい
サービス枠
新しい柱を立てたい
出たい
▷ 注意:上限額・補助率・賃上げ特例の条件は、公募回で変わります。ここの数字は第1回の公募時点の目安です。出す前に、必ず最新の公募要領で確認してください。
3つの枠の、どれか。
03いくら出て、何に使える?
枠が決まったら、次は「何に使えるか」。ざっくり言うと、機械や設備、システムを入れるお金が中心です。「人を雇うお金」や「研修のお金」ではありません。
| 使えるお金(例) | 使いにくい・対象外(例) |
|---|---|
| 機械装置・システム構築の費用 設計や試験などの外注費 設備の導入にかかる費用 |
社員の給料・研修費 今ある製品を「ただ増産するだけ」の投資 廃業にかかる費用 |
審査では、建物を建てるより、機械やシステムに投資する計画のほうが評価されやすいと言われます。
▷ 注意:対象になる経費・ならない経費は、枠と公募回で細かく決まっています。買いたいものが対象か、必ず最新の公募要領で確認してください。
04上限を上げる「賃上げ特例」と、守る約束
どの枠にも出てきた「賃上げ特例」。上限額を上げてもらえる代わりに、給料をちゃんと上げますよ、という約束です。中身は2つ。
- 社員一人あたりの給料の総額を、年平均で合計6.0%以上、増やしていくこと。
- 会社の中でいちばん低い時給を、地域の最低賃金より50円以上、高くすること。
ここで大事な注意です。約束した賃上げが達成できないと、補助金を返すことになります。上限が上がるのは魅力ですが、背伸びは禁物。あとで苦しくなっては元も子もない。自社の体力に合わせて、守れる範囲で決めてください。
▷ 注意:賃上げ特例の細かい計算方法は、公募要領で定められています。ここは制度の要になる部分なので、数字は必ず一次情報で確認してください。
05申請から入金までの流れ(図解)
はじめての人がいちばんつまずくのが、この流れ。全体を先に見ておくと、段取りが組めます。
▷ 注意:お金は「後払い」です。先に自社で立て替える必要があります。資金繰りも、計画に入れておいてください。
06第1回の締切(時系列)
第1回の公募スケジュールは、こう決まっています。
締切当日の午後6時を1秒でも過ぎると、受け付けてもらえません。電子申請はぎりぎりに混みます。数日前には出し終える段取りで動いてください。
出す前に、この順番でチェックしてみてください。
- やりたいことは「今の強化」か「新しい分野」か「海外」か、社内ではっきりさせる。
- それに合う枠(革新的新製品・サービス/新事業進出/グローバル)を選ぶ。
- 賃上げ特例を使うか、自社の体力と相談して決める。
- 締切・上限額・補助率は、必ず最新の公募要領で最終確認する。
07採択される計画と、よくある不採択
審査で見られるのは、だいたいこの3つです。
- 新しさ。近所の他社のマネではなく、「自社ならでは」があるか。
- つながり。今ある自社の強みや技術と、新しい事業が線でつながっているか。
- 数字。売上や付加価値が、どれだけ伸びるかを数字で語れているか。
逆に、落ちるパターンもはっきりしています。
- 今ある製品を「ただ増やすだけ」で、新しさがない。
- 交付決定より前に、発注や契約をしてしまう(事前着手)。
- 実績報告の期限を、過ぎてしまう。
- 中身のうすい、テンプレそのままの計画書。口頭審査でボロが出る。
▷ 注意:計画書は、AIに"下書き"までは頼めます。でも、口頭審査で語るのは社長自身。丸投げでは通りません。
08もう一歩くわしく:用語・つまずき・ケース
用語を、かみ砕く
| 用語 | この記事での意味 |
|---|---|
| 統合新制度 | 新事業進出・ものづくり商業サービス補助金。旧ものづくり+旧新事業進出が一つに |
| 3つの枠 | 革新的新製品・サービス/新事業進出/グローバル。やりたいことで選ぶ |
| 賃上げ特例 | 給料を上げる約束と引き換えに、上限が上がる仕組み。未達なら返還 |
| 口頭審査 | 社長本人が「なぜこの事業か」を自分の言葉で語る審査 |
よくあるつまずきと、直し方
| つまずき | 直し方 |
|---|---|
| 「ものづくり補助金」で検索して古い情報を見る | 正式名で確認。旧制度は受付終了 |
| 枠を決めずに書き始める | 今の強化か、新分野か、海外か。先に社内で決める |
| 賃上げ特例で背伸びする | 達成できないと返還。自社の体力で |
| 計画書をAIに丸投げして口頭審査でボロが出る | 下書きは使っていい。語るのは社長の言葉で |
ケースで見る(仮の例)
周南の部品メーカー(社員40名・仮の例)。「ものづくり補助金に出したい」と相談。中身を聞くと、今の製品の生産性を上げる設備更新。これは「革新的新製品・サービス枠」の話で、新事業進出枠ではない。枠が決まると、書くべきことも決まります。
次に賃上げ特例。上限は上がるが、年平均6%の給与総額増を数年続ける約束。社長は数字を置いてみて「今の受注見込みだと、2年目がきつい」と判断し、特例なしで出した。上限は下がっても、返還のリスクを背負わない選択です。
口頭審査の前に、社長が一人で5分話す練習をしました。「なぜこの設備で、会社がどう変わるか」。書いたことを自分の言葉で言えるか。ここが最後の分かれ目です。
- 旧制度名で探さない。統合新制度が窓口
- 枠が決まれば、書くことも決まる
- 賃上げ特例は約束。背伸びしない