「賃上げに使える補助金、ないん?」。周南の社長さんからよく出る質問です。給料に直接お金が出る、という話をイメージされます。でも実際は少し違います。賃上げ系の補助金の多くは、設備投資に出るお金です。機械やシステムを入れて、会社の稼ぐ力を上げる。その体力で賃上げを続けよう、という組み立てです。この記事では、山口県の賃上げ補助金と、国の業務改善助成金の2つを、対象・金額・締切まで並べて見ていきます。
01「賃上げの補助金」の正体は、設備投資
先に、いちばん誤解されるところをはっきりさせます。賃上げに使える補助金は、給料そのものに出るお金ではありません。人件費は、たいてい対象外です。
出るのは、設備やシステムを入れるお金。自動梱包機や配膳ロボット、無人搬送車(AGV)、注文タブレット。そういう「人の手を減らす道具」に補助が出ます。省力化で余った力を、賃上げに回す。国も県も、この考え方でつくっています。
▷ 覚えておくと得:「賃上げの補助金=人件費が出る」ではなく、「設備を入れて、稼ぐ力を上げるためのお金」。この一点を押さえるだけで、探し方が変わります。
02山口県の賃上げ補助金を、表で見る
山口県には「中小企業賃上げ環境整備支援事業補助金」があります。事務は、県から委託を受けた事務局(宇部市)がしています。会社の規模で2つの枠に分かれます。
| 枠 | 補助上限 | 下限 | 補助率 | 募集件数の目安 |
|---|---|---|---|---|
| 小規模 事業者枠 | 100万円 | 10万円 | 1/2以内 | 170件 程度 |
| 中小企業者枠 | 500万円 | 50万円 | 1/2以内 | 100件 程度 |
いちばん大きいのは中小企業者枠で、上限500万円・補助率2分の1以内。小規模事業者枠は上限100万円です。1事業者につき1申請まで。複数の店舗や事業所ごとの申請はできません。
▷ 注意:この数字は令和8年度(調査時点)の募集要領の値です。年度で変わります。出す前に、必ず最新の募集要領で確認してください。
03対象になる会社(売上が減っている+設備で付加価値UP)
「賃上げ」という名前ですが、入り口の条件は少し意外です。ざっくり、この2つを両方みたす会社が対象です。
- 売上か利益が、減っている。令和7年4月〜令和8年3月のうち、好きな3ヶ月をとる。その合計の売上高か営業利益が、前年か前々年の同じ時期より減っていること(物価高などの影響)。
- 設備で、付加価値を上げる計画がある。生産性を上げる機器や設備を入れて、付加価値額などをのばす計画を立てていること。
県内に事業所を持つ中小企業であること、みなし大企業ではないこと、県税の滞納がないこと。ここも条件です。パートナーシップ構築宣言を登録していると、審査で加点されます。
▷ コツ:「売上が減っている」の確認は、決算書や帳簿で3ヶ月を選んで比べます。どの3ヶ月をとるかで、条件をみたすか変わることがあります。数字を並べて、いちばん見やすい組み合わせを選んでください。
稼ぐ力を上げる設備に出る。
04何に使える?(対象経費)
山口県の賃上げ補助金で、使えるお金と使えないお金を並べます。設備が中心で、人件費は出ません。
| 使えるお金(例) | 使えない・対象外(例) |
|---|---|
| 設備のリース料・レンタル料(賃借料) 設備設置による施設改修費 備品購入費(1点10万円以上・税抜) 消耗品費(1点10万円未満・税抜) |
社員の給料・人件費 事務用のパソコン・タブレット・車両などの汎用品 委託費・役務費・謝金 不動産、敷地整備、建物の新築 |
設備の例として、募集要領には自動梱包機・配膳ロボット・テーブルオーダーシステム・工場内の無人搬送車(AGV)が挙がっています。消費税は補助の対象外です。1点50万円(税抜)以上のものは、あとで勝手に処分できない財産になります。
▷ 注意:同じ設備に、国・県・市の補助金を二重取りはできません。業務改善助成金など他の制度と、どちらで出すかは先に決めておいてください。
05今年の申請は、いつだった?(時系列)
令和8年度の山口県の賃上げ補助金は、募集の期間が短めでした。スケジュールを並べます。
受付は4月の1ヶ月だけでした。今年の分はもう締め切られています。来年度も同じ形で出るなら、年明けから4月にかけてが勝負です。決算や設備の候補を、今のうちから用意しておくと動きが速くなります。
▷ 注意:次の年度に同じ補助金が出るとは限りません。募集の時期・金額・条件は毎年変わります。この補助金は、事務局のサイトで最新を確認してください。
06国の賃上げ支援「業務改善助成金」
県の補助金の受付が終わっていても、国の道があります。それが業務改善助成金(厚生労働省)です。こちらは県のものより、募集の期間が長いのが特徴です。
中身はよく似ています。生産性が上がる設備を入れて、その代わりに社内のいちばん低い時給(事業場内最低賃金)を一定額以上あげる。この約束をすると、設備の費用の一部が助成されます。
- 従業員がいない会社は、対象になりません。
- 雇用保険に入っていて、雇ってから6ヶ月を過ぎた人の時給をあげる必要があります。
- 助成率は、あげる前の時給の水準で変わります。
▷ 注意:業務改善助成金の上限額・助成率・コースの区分は、年度や申請時期で細かく変わります。金額はここに載せません。必ず厚生労働省の最新の案内で確認してください。
07県と国、どっちを狙う?
2つの制度は、入り口の条件が違います。自社がどっちに当てはまるかで選んでください。
| 山口県 賃上げ環境整備支援 | 国 業務改善助成金 | |
|---|---|---|
| 入り口の条件 | 売上か利益が減っている+設備で付加価値を上げる計画 | 社内の最低時給を一定額以上あげる |
| 賃上げの位置づけ | 計画の狙い(稼ぐ力で賃上げを後押し) | 時給引上げが、そのまま条件 |
| 募集の期間 | 短め(今年は4月の1ヶ月) | 長め(年度を通して募集の年が多い) |
| 上限(目安) | 最大500万円 | 要確認(コースで変わる) |
落ちている
賃上げ補助金
あげていく
業務改善助成金
気になる
仕分け
同じ設備に両方は使えません。どちらの条件に当てはまりやすいか、募集が開いているのはどちらか。この2つで先に絞ると、動きやすくなります。